【炊飯器から】

妻から電話がありました。
「残業で遅くなる。ご飯を炊いといて。1合半」
私は用務員ですから、自発的にやる以外に残業はほとんどありません。

帰宅して朝方使った茶碗を洗い、炊飯器に米を仕掛けてスイッチを入れます。
いやはや便利になったものです。私が幼少のころは、薪(まき)や藁(わら)で母親がご飯を炊いていました。大きな二連のかまどを今も覚えています。近所で葬式があった時も、とても大きな釜でご飯を炊いて、葬儀の手伝いに集まった地域住民をもてなしました。

炊飯器からご飯の炊ける音がしてきました。
いい匂いもしてきます。
時代は変わってもご飯の炊ける匂いは私を安心させます。日本人だからか、食文化だからか、それとも、懸命にご飯を炊いていた母親の姿と重なるのか、たぶん、どれもそうなのでしょう。


(川原藤楽空)